12月句会「結果」

  第98回 12月句会「結果」
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1月句会は1月10日(日)午後5時投句締切の3句以下出し

特選句 選評集


1.使はざる部屋の暗さや冬に入る(信之)
児玉硝子さん評
一読、静謐な印象。使わない部屋の暗さ、闇の深さに冬が来た実感が集約されている。

4.短日や捨てかねてゐる古時計(信之)
加藤直克さん評
古時計には、思い出せない、あるいは思い出したくない記憶が詰まっているような気がします。だからこその断捨離なのでしょう。

5.角笛の木霊吸ひ込む霧氷林(英和)
大津留直さん評
霧氷が森や林に降りると、それが全ての音を吸い込んだかのようなシーンとした静寂が現出する。掲句は、おそらく、牧神が奏でている角笛の音とその木霊さえ吸い込んでしまうと言うことによって、その静寂をよく言い当てている。

6.而今への補陀落渡海冬の月(直)
五島高資さん評
而今には、「過去や未来にとらわれず、ただ今を一所懸命に生きる」という意味が込められている。惟みれば、コロナ禍などに悩まされる現在こそ苦界であり、まさに冬の月は、その荒波に浮かぶ孤舟のようでもある。生死を超える浄土への篤い希求が覗われる。

7.冬木の芽猫の住みつく美術館(信之)
星人評
季語「冬木の芽」は春を待つ躍動感を内包しています。猫という躍動感を内包する美術館はまさに「冬木の芽」なのです。

15.見送りて十一月の駅広し(一彦)
鈴木浮葉さん評
友か、身内の誰かを見送ったのか、さまざまなドラマを想像する。人去りし後の駅の広さに、例えようもない寂しさを感じる。もしかして、見送ったのは、死者かもしれない。

23.落日や窓一面の冬木立(淳子)
石田桃江さん評
額縁に入った絵画を鑑賞する気分です。厳しさに身の引き締まる思いがします。

25.三島忌やマスいっぱいの三島の字(硝子)
眞矢ひろみさん評
三島忌、由紀夫の忌、憂国忌など、忌の呼び名さえ多様な三島由紀夫その豊饒な世界をひとからげにするような「マスいっぱい」の描写が心地よい

28.赤ん坊の掌の広ごりて冬銀河(ひろみ)
服部一彦さん評
未来を目指す赤ん坊、悠久永劫の銀河、その中にいる作者の温かい眼差し。時間に感情がこもっている。

31.煤払い阿弥陀如来の微笑かな(龍子)
於保淳子さん評
阿弥陀如来の静かな微笑みが煤払いでさらにすっきりとし、心温まるような気がします。

32.波音に吹かれ綿虫惑ひけり(ひろみ)
森信之さん評
いまにも雪が降り出しそうな、どんよりとした空を想いうかべます。冬の波の音は寒さを助長させます。

34.隼のこゑ聴いてゐる海鼠かな(星人)
朝吹英和さん評
空中と海中、俊敏なものと愚鈍なものとの対比、滑稽味のある一句。季重なりは海鼠に焦点が絞られておりクリアされている。
松本龍子さん評
一読、「宇宙のリズム」を感じる。季重なりだが、季語の強弱と切れの位置から季題は明確である。一本の管である<海鼠>には何億年も海辺で生きてきた「波打ちのリズム」と太陽系の「天体の運行」が記憶されている。だとすれば<隼のこゑ>としての呼吸に「共振」しているのは自然なことなのだろう。