3月句会「結果」

  第101回 3月句会「結果」
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4月句会は4月10日(土)午後5時投句締切の3句以下出し

特選句 選評集


2.他界への道はこの辺桃の花(ひろみ)
松本龍子さん評
一読、「時間と空間の入替」を感じる。<他界への道はこの辺>とは何か。折口信夫は波打ち際に立って「魂のふるさと」である「常世」を見ていたが、この作者は<桃の花>の前に立って、これから住むであろう未知の国を眺めているのであろう。視線の先に、<桃の花>が揺れている。その桃の色が空まで拡がっている奇妙な別世界。「ほうとする」身体的な恍惚を呼び覚ます、彼岸の原郷世界が見えてくるようである。
児玉硝子さん評
魂の行き先に鄙びた愛らしい桃の花が咲いている。深い静謐さが身に沁みる。 
星人評
桃の咲いている場所の空気感はまさにこんな感じです。現実とは懸け離れた異質な場所が花の向こうに見えるのです。震災に遭ったのにまだ気づかずにおられる魂の足取りを思いました。

3.鎮魂歌沈む波間や春寒し(英和)
於保淳子さん評
震災から10年、犠牲者の魂は今なお、海底深くにあるのかもしれない。鎮魂歌は深く沈んでそこまで届いただろうか。未だに癒えない悲しみと祈りを感じます。

5.なかんずく歳時記春に傷みあり(ひろみ)
服部一彦さん評
回憶の宝庫とも。

9.呆然として海を見る春の蟻(龍子)
眞矢ひろみさん評
人間も蟻も同じであるということ。確かに大海から見れば。

18.十年いまなほ身を刻む余寒かな(直克)
朝吹英和さん評
大震災から十年が経過してなお復興の遅れが目立つ被災地もあると聞く。中七の措辞と季語との響き合いが痛切。

19.春光よ海のまぶたを持ち上げて(硝子)
加藤直克さん評
「春光よ」の呼びかけの中に祈りが聞こえる。もはや相見えることのない人への思いが、「海のまぶた」という意表を突く言葉の中に凝縮されている。一人の人を失うということは一つの世界を失うこと、しかしその人への祈りは失われた世界そのものの蘇りであることを感じさせる。
鈴木浮葉さん評
海のまぶた、にやられました。なかなかこうは言えない。
五島高資さん評
本来、春の海は「春の海ひねもすのたりのたりかな」のように長閑で眠たげである。もっとも、津波のように大波となる場合もあるが、掲句では、春望に大いなる生命の目覚めが感じられる。

21.凪ぐ海の朧の果てやカノープス(高資)
森信之さん評
静かな海の向こうに輝く1等星カノープス。穏やかな大きな宇宙の空間が見えてきます。

26.春風を遊ばせている耳たぶは(硝子)
石田桃江さん評
イヤリングが春風にキラキラゆれている光景が浮びます。気持の軽くなる楽しい句です。

35.菜の花やはや中学へ踏み出だす(桃江)
大津留直さん評
菜の花が黄に咲き盛るこの時期、この春小学校を卒業する子供たちの心は、大きな喜びをもって、すでに中学へと踏み出している。それを、「卒業」とか「入学」とかの季語を使わず、「菜の花」という季語で表したところにこの句の功績がある。