2月句会「結果」

  第100回 2月句会「結果」
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3月句会は3月10日(水)午後5時投句締切の3句以下出し

特選句 選評集


4.充電器みたいな背中春を待つ(硝子)
五島高資さん評
たしかに人間の生体は神経を介した電気信号による情報伝達によって精妙に制御されている。そういう意味でも電気を蓄えた充電器と言えなくもない。もちろん、掲句では、冬場に蓄えた精気を発揮する春が待たれるということだと思うが、いずれにしても、生命の不思議が秘められた句だと思う。

11.猫の耳ピクンと振れて春立ちぬ(淳子)
朝吹英和さん評
冬の寒い頃に屋内では炬燵や暖かな部屋で、屋外では陽だまり等でじっと動かずにいる猫の耳が何かを感知して動いた。春の気配を敏感に感じ取った猫の生態描写(「ピクンと振れて」の措辞が奏功している)から春の到来が実感される。

12.縁側に猫の鈴の音日脚伸ぶ(英和)
森信之さん評
春間近。日も永くなったなあと感じるあたたかな日。縁側には猫がいる。ほのぼのとした幸せそうな光景が目に浮びます。

14.寒凪や大海もまたひとしずく(ひろみ)
於保淳子さん評
冬の静かな、かつ抗いがたい海を前に、これは水の一滴一滴が集まったものだと感じている。静かな中に悟りのようなものを見ているような気がします。

17.止り木に黙って二月バールパン(硝子)
加藤直克さん評
最初バールパンはパンの一種かと思ったが、ルパンというバーだと気づき納得。コロナ禍で苦しいバーだからこそ行ってあげたいという気がするのだが…。でも会話は控えて止まり木(バー)にじっと止まっているのだろうな。
松本龍子さん評
一読、「意外性」を感じる。<バールパン>とは何か。太宰治のイメージを鮮明にした写真家林忠彦の<酒場銀座ルパン>のポートレート。会社の先輩に誘われて新入社員の頃、飲んだ記憶がある。<止まり木に黙って>とは写生句だとすれば鳥が見えてくるが、コロナ緊急事態宣言の現状からすれば、ぽつんと寂しくスマホを眺めながらブランコを漕いでいるサラリーマンが見えてくる。「見えない不安」のイメージが巧みに重層化されている。

18.部屋のドア開けつ放しや春来る(信之)
児玉硝子さん評
コロナの換気のため、ドアを開けている。一年に及ぶそんな暮らしを感慨深く再確認しつつ、立春で春への期待感が増してゆく。

21.ボールペンインクのかすれ余寒かな(信之)
鈴木浮葉さん評
あれもう書けないかな、まだちょっとはいくかなとインクの出具合を紙に押し付けている掠れ具合と、冴えかえっては戻る、余寒との繋げ方が面白い。

25.待ち針の玉耀へり春隣(浮葉)
眞矢ひろみさん評
玉ではなく、針が光り始めれば春ということ

27.一村に乱の気配や春の月(直)
服部一彦さん評
なんだかわからないが、聞いただけでもう楽しくてしょうがなくなる。
星人評
やわらかな春の月影と「気配」という不確かなものがうごめいている村。ぼんやりとしたものの一面が明らかになる寸前の句だ。「乱」の根源にあるのは被災かコロナ禍か。

31.うすらひをかざせば揺るる現世かな(星人)
石田桃江さん評
現在の世の中に起きている現象(コロナ危機、災害、格差など)を改めて考えさせられました。うすらひと揺るるの表現をいただきました。


32.寒明の水平線を夜汽車かな(星人)
大津留直さん評
一読、一気に句が喚起する景に引き込まれる思いがする。おそらく、どこか大陸のただ草原だけが広がる曠野を走る鉄道の夜汽車が、その水平線のあたりに見えるだけの景なのだが、それが「寒明」という季語と取り合わされることによって、ある壮大な物語の始まりを思わせるのである。宮沢賢治の銀河鉄道は、地球を離れてゆくのだが、この句の夜汽車は、地球を離れることなく、そのまま曠野を走り続けることが想定される。むしろ、トルストイの長編小説の世界か。