1月句会「結果」

  第99回 1月句会「結果」
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2月句会は2月10日(水)午後5時投句締切の3句以下出し

特選句 選評集


11.乗り降りもなくドア閉まるレノンの忌(高資)
服部一彦さん評
去来する甘酸っぱい記憶。自愛とも。
眞矢ひろみさん評
師走の地下鉄駅の雑踏のなかで、ニュースに接したことを覚えている。彼の不在を強く感じる、思い起こす、最近の世相である。
児玉硝子さん評
コロナ禍の今の時代にジョン・レノンが生きていたら、どんなメッセージを曲に乗せてくれただろうか。季語を引き立たせるこのドアに何とも言えない空虚感が漂う。
星人評
環状線の車両から伝わってくる動きに身を委ねていると、レコード盤の上下の揺れと音溝のループを感じることができる。「閉まる」イコール「動き出す」。次の曲が始まる。

12.相寄るは惑星ふたつ柚子ふたつ(星人)
森信之さん評
木星と土星が397年ぶりに大接近。何と去年の冬至の12月21日。冬至といえば柚子湯をすぐ想いうかべます。

13.寒昴のり弁買えば丘のうえ(ひろみ)
五島高資さん評
昴の語源は、動詞「すばる(統ばる)」に由来するという。掲句では、丘の上で一人のり弁を食べながら星空を眺めている光景が思い浮かばれる。六連星というように星さえも集まるのに、コロナ禍の現在は人が集まる「密」を避けなければならない。いっそう寒昴が身に染みて見えることだろう。気兼ねなく人々が集まって食事ができる世の中になってもらいたいものである。「のり」が「糊」に通じるように感じるのも偶然ではないだろう。 

14.雪国の真白き朝や無音なり(淳子)
石田桃江さん評
目覚めた朝の光景でしょうか。まだ動きのない一日の始まりの一時が、雪国、真白、無音によりあたたかな空気に包まれます。

24.寒林を渡れる声や十句経(直)
松本龍子さん評
一読、「祈り」を感じる。典型的な取り合わせの句。<十句経>とは何か。白隠禅師が広めた『延命十句観音経』というおまじないのようなお経のこと。このお経は葉を落とした寒中の林を通り過ぎる声のようであるという句意だろうか。侘しいとか、辛いとかの感情移入は言葉としては描かれていない。しかし<十句経>を呪文のように毎日繰り返すことで<寒林を渡れる声>のように身心は深く昇華され、励まされ、心の奥から力が湧いてくるのだろう。

28.全集中風の子風邪を置き去りに(英和)
於保淳子さん評
寒風も気にせずに元気に走り回る子供たちの歓声が聞こえるようです。

32.梟の鳴くやルオーの太き線(星人)
加藤直克さん評
ルオーの絵の太い輪郭は、若いときにステンド・グラス職人であったことに由来すると言われる。そこから闇の中の光という終生のモチーフが生じたのではないだろうか。コロナ禍の闇に啼く梟は、まさにルオーの祈りに通じるような気がする。
鈴木浮葉さん評
ルオーは特に大好きな画家ではないのになぜか心に残る。「郊外のキリスト」など。あの太い黒い線と梟の鳴き声、うん、なるほど。
朝吹英和さん評
梟の鳴き声からルオーの骨太の絵画への転位が幻想的。
大津留直さん評
まさに、二物衝突の句。ステンドグラスの技法から来ていると言われるルオーの太い線。梟の鳴き声を聴いていると、その太い線が思い出されるということに何となく納得させられてしまう。が、秘密は、その音にあるのだろう。つまり、「ふくろう」と「ルオー」、そして、「ふとき」が音の上で繋がっているのだ。音に鋭い作者の口をついて出てきた句が、作者自身を驚かせているのが目に浮かぶ。